こんにちは
進行した虫歯やケガで欠けた歯の治療では、被せ物治療が行われます。
今日の歯科治療では、いろいろなタイプの被せ物が使われています。
種類がたいへん多いので、迷ってしまうという方も珍しくありません。
そこで、今回は、被せ物をどれにしようかと迷ったときに、選ぶポイントをご紹介します。
■被せ物の種類
まず、現在使われている被せ物の種類についてご説明します。
・金属冠
金属製の被せ物のことで、一般的に銀歯として知られています。
歯全体を覆う全部金属冠(FMC)、金属冠の唇面(表面)にコンポジットレジンというプラスチックをつけたレジン前装金属冠、歯を部分的に覆う3/4冠・4/5冠など、いろいろなタイプがあります。
見た目は良くないのですが、金属で作られていますので強度が優れています。
・CAD/CAM冠
CAD/CAMとは、コンピューターを使って設計したりものを作ったりすることです。
CAD/CAM冠は、歯科用のCAD/CAM装置を使って作られた被せ物です。
従来の被せ物は手作業で作っていましたが、CAD/CAM冠はコンピューターが制御して制作するため、加工の精度が高くなっています。
コンポジットレジン系の素材で作られたタイプと、セラミック系の素材で作られたタイプがあります。
前者は、部位や条件に制約がありますが、保険診療にも導入されています。
歯の色に近く目立ちにくい反面、コンポジットレジン系なので、強度が弱く欠けやすいです。
セラミック系のCAD/CAM冠は仕上がりも自然で、強度も優れています。
・硬質レジンジャケット冠
コンポジットレジンで作られた被せ物です。
歯の色に似ているため、目立ちにくいのですが、すり減ったり、欠けたりしやすい傾向があります。
・ジルコニア・オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンは、セラミックで作られた被せ物です。
見た目が自然で違和感がないのですが、強度が弱く欠けやすい弱点があります。
そこで、内側をジルコニアという人工ダイヤモンドともよばれるセラミックで補強したものが、ジルコニア・オールセラミッククラウンです。
ジルコニアには光透過性があるため、ジルコニア・オールセラミッククラウンは、本物の歯と同じような自然感と透明感のある仕上がりになります。
・陶材焼付鋳造冠
セラミッククラウンの内側を金属で補強したタイプが陶材焼付鋳造冠です。
メタルボンドともよばれています。
本物の歯に近い自然さが得られるため、ジルコニア・オールセラミッククラウンが登場する前までセラミッククラウンの主流でした。
金属を使っているため、ジルコニア・オールセラミッククラウンと比べると、少し自然観や透明感で劣ります。
・e-max
E-maxは、ガラス系の素材で作られたセラミッククラウンです。
ガラス系の素材なので、透明感が高いのが特徴です。
ジルコニア・オールセラミッククラウンほどの強度はないので、ブリッジという大きめの被せ物には使えません。
・ゴールドクラウン
ゴールドクラウンは、金合金やゴールドとプラチナの合金である白金加金などで作られたクラウンです。
金は貴金属の一種です。
貴金属は酸化(さび)にくい特性を持った金属です。
このため、経年劣化を起こしにくく、変色することもありません。
金属ですから強度も高く、割れるリスクもほとんどありませんし、硬すぎないので歯にも優しいです。
見た目が金色なので不自然であるという点が弱点ですが、それ以上にたくさんの利点を持つ被せ物です。
■被せ物の選び方
被せ物を選ぶポイントをご説明します。
・治療費
被せ物は保険診療の適応があるタイプと、そうでないタイプに分けられます。
治療費という点で比べてみると、保険診療の適応のあるタイプが優れています。
保険診療の適応があるのは、『金属冠』『CAD/CAM冠』『硬質レジンジャケット冠』です。
窓口での通常の負担割合である3割をベースに考えても、歯1本あたり7,000円を超える被せ物はありません。
保険診療の適応外となるセラミック系の被せ物ですと、歯1本あたり10万円前後も珍しくないので、保険診療の被せ物が安価であることがわかります。
・仕上がり
被せ物の仕上がりを重視して選ぶという選び方もあります。
この場合は、セラミッククラウンが第一選択となります。
セラミッククラウンにも『ジルコニア・オールセラミッククラウン』『陶材焼付鋳造冠』『e-max』といろいろな選択肢があります。
自然な仕上がりと強度を求めるなら、『ジルコニア・オールセラミッククラウン』がおすすめです。
いずれも高額ですが、少しでも治療費を抑えたいなら、『陶材焼付鋳造冠』か『e-max』となります。
・プラークコントロール
プラークコントロールとは、歯の表面についているプラークを取り除くことです。
虫歯や歯周病はお口の中の細菌によって引き起こされますが、虫歯や歯周病の原因菌のほとんどは歯の表面についているプラークの中に潜んでいます。
プラークコントロールが大切と言われるのは、このためなのですが、実は被せ物の素材によってプラークのつきやすさに差があります。
プラークがつきにくいのは、『ジルコニア・オールセラミッククラウン』『陶材焼付鋳造冠』『e-max』などのセラミッククラウンや『ゴールドクラウン』です。
対して保険診療の被せ物は、いずれのタイプもプラークがつきやすい傾向があります。
プラークコントロールを重視するなら、保険診療の被せ物は避けた方がいいでしょう。
・歯への負担
歯への負担が軽いものを重視するとすれば、『ゴールドクラウン』です。
セラミックほどの厚みが必要ないので、歯を削る量を少なく抑えられますし、歯へのフィットも歯科材料の中でトップクラスです。
また、歯にとって硬すぎないので、噛み合わせたときに歯に大きな負担がかかることもありません。
・金属アレルギー
歯科で使われている金属材料に金属アレルギーのある方は、金属材料を一切使わない『ジルコニア・オールセラミッククラウン』『e-max』か、保険診療の『CAD/CAM冠』がおすすめです。
・歯肉変色
保険診療で用いられる金属材料は、経年劣化により金属イオンが溶け出すことが知られています。
金属イオンが染み込んだ歯肉は、黒っぽく変色します。
このため、銀歯の周囲の歯肉がしばしば黒っぽくなっています。
このような歯肉変色を起こさないという点を重視するなら、『セラミッククラウン』や『ゴールドクラウン』がおすすめです。
■まとめ
今回は、歯科治療で使われている被せ物を選ぶ上でのポイントについて、被せ物の種類とともにお話ししました。
被せ物を選ぶポイントは
①治療費
②仕上がり
③プラークコントロール
④歯への負担
⑤金属アレルギー
⑥歯肉変色
です。
どのタイプにしようか迷っておられる方は、ぜひご参考にしてください。